Youright的な見解

あくまでも私的な見解である

由々しき報道(パソナ編)

今朝の朝刊に、昨日の5日に政府が発表した「経済財政諮問会議」と「産業競争力会議」のそれぞれ新メンバーの顔ぶれが掲載されていた。私が確認する限り産経新聞以外の各紙は、この記事を載せていた。

この諮問会議と競争力会議とは平たく言うと、経済や産業を発展させる為に企業の経営者や研究者等が集まり政治に助言を行うものである。これらの活動は政治に介入しているわけであり、このメンバー影響力は絶大であり、故に民間議員と呼ばれる。

3日に内閣改造で閣僚の人事が変わった為、このタイミングで民間議員のメンバーもリフレッシュする事になったのだろうか?

 

しかし、リフレッシュ人事と言っても、実際は向こうの会議からこっちの会議へといったようにメンバーが行き来しただけで、正確には組換え人事と言った方が適切かもしれない。一方では、新任のメンバーも3名ほど起用されていたようである。

そして、当然メンバーの中には竹中平蔵氏の名前も書かれていた。

私は以前から竹中氏について書かせてもらっているが、彼は小泉内閣時に民間出身でありながら国務大臣に就き、その改革により元々30万人程度だった派遣労働者を140万人まで増やし、さらに大臣の職を辞した後、人材派遣会社パソナの大元パソナグループの会長に就任した人物である。因みに竹中氏が大臣の期間中に、パソナの売上は2倍近くまで増えている。

これを天下りと言わずして何と言おうか!!

 

そんな輩が、未だに産業競争力会議のメンバーに名を連ねている現状は個人的には不満であったが、気を沈めて竹中氏の名前が書かれた新聞を再度読み返すと、何か違った違和感を感じたのだった。

f:id:Youright:20140906042731p:plain あるはずのモノが無い

各紙面ともに、新メンバーの紹介は概ね次のように掲載されていた。

  • 「会社名もしくは組織名」 + 「役職」 + 「氏名」

といった具合であり、例えば今回留任した楽天三木谷社長の場合は、

という表記になり、新聞社によっては名前が先で社名・組織名が後になる表記もあった。

これら民間議員の肩書きを見ると、経団連会長や住友商事東芝など、日本を代表する企業の幹部や経済界の重鎮といった錚々たる顔ぶれが、名前を連ねているのがわかる。

そんな豪華メンバーの中で、竹中氏の名前と肩書きを覗いてみると

 慶應義塾大学教授 竹中平蔵

となっているのだ。

ん? パソナグループでは無くなったのか・・・?

私は初め日経を読んでその事実に気付いたので、慶大教授という肩書で表記しているのは同紙だけかと思ったのだが、他紙を確認したところ読売も朝日も、やはり同じように慶大教授の肩書で掲載されていた。

もしかしたら、会長職を辞職したのでは?とも思い調べてみたが、現在もパソナグループ会長である事には間違いなかった。

では、一体なぜパソナグループの竹中平蔵と名乗らないのか?

例えば他にも教授職のメンバーは2名いるが、両名とも東大教授であり企業に在籍している様子はない。また、社名が長くて表記し辛いとの見方は、サントリーホールディングス三菱ケミカルホースディングスの役員がメンバーに入っており、これらパソナグループより文字数が多い社名は省略されることなく表記されている。

 

つまり、これは何か意図的な裏があってパソナがメディアに口利きを行い、竹中氏の肩書である社名を伏せたとしか思えない。

これは考え過ぎであろうか・・・?

f:id:Youright:20140906042739p:plain 「由々しき報道である!!」

私がそう勘ぐるのは、昨日9月5日の朝日新聞の報道にある。

記事には、「厚労省が派遣労働法改正の再協議を急ぐ」と小さく報じられており、その元は、新厚労相の塩崎氏が就任時に発言した内容によるものであった。

この改正法案とは、「派遣の規制を緩和し今以上に増長させる」法である。

先ほども述べた通り、パソナは人材派遣業の最大手の一角であり、その大元のパソナグループ会長は、政府の政策に多大な影響を与える民間議員の一員でもある。

もし「人材派遣会社の役員が政府側にいる事」と「派遣労働法改正」の関係をメディアが堂々と報じたものなら、それを見た国民は当然ながら「既得権益である」と大騒ぎになる可能性も十分にあるわけだ。

そのような事情から、パソナがメディアに緘口令を敷いたのではないか?と私は疑っている。

 

話はこれだけに限らない。

この他に、外国人労働者の「受入れの規制の緩和」「就業制度の規制緩和」等は現在も政府で協議がなされている案件だが、これら政策の行きつく先は、派遣業界に利益をもたらす事になるのである。

さらに前回の記事でも書いたが、派遣業を監督する厚労相パソナが深い交友関係を築いているのも事実だ。

 

しかしながら既成メディアは、このような癒着を報じず黙認しているのが現状になっている。 

マスコミや新聞社はメディアと言っても結局は営利団体である以上、広告収入で経営が賄われている部分もあり、その元である優良企業に不利益になるような報道を自主規制するのは、現在の社会では仕方ない事かも知れない。

もっぱらこのような報道を進んでするのは、週刊誌等のタブロイド紙やネット情報に限られてしまっているのが現状であるし、今後もこの構図は変わらないだろう。

 

そもそも、民間議員と言うのは国民の選挙で選ばれた議員では無いわけで、企業側の人間が政治に干渉すること自体が、既得権益に反する行為なのであり、今の安倍政権が企業の為の政権と称される所以にもなっているのだ。

過去を例に見ても、国と企業が一体となって行った事業などは、東電しかりJALしかり、ろくでも無い事が多い。それが現実である。

 国会とは法律を作成する所であり、可決されるまでの経緯は国会放送として国民に伝えられる。しかし、このような民間議員が行う会議の議事録は殆んど国民に知らされる事がない。

結果として国民は法が可決され施工され、その法の内容といった結果だけは知らされるが、そこに至るまでの背景は見えて来ないのである。

 

元来メディアと言うのは、政治に対して国民が疑問に思う事を、自ら追求し・報じ・正す事が役割である。

だが今や、そのメディア本来の役割は、見る側の国民へ移行されたと考えるべきであろう。