Youright的な見解

あくまでも私的な見解である

報道のココがおかしい!!スコットランド独立とメディアリテラシー

 昨日の新聞各紙は、ほぼ一面でスコットランド独立否決を報じていたのだが、ちょっと違和感を感じたのは私だけだろうか? 

 と言うのも、この報道は元々日本であまり熱心にされておらず、投票前日になってようやく各紙が1面で報じるようになった程度であり*1、それまでは余り関心を引くような記事を載せていたわけではなかった。だが、否決が決まった昨日20日の朝刊は各紙とも1面に掲載するのは勿論の事、その他にも紙面2~3ページに渡り特集を組んで報道するなど、明らかに投票前後での報じ方に温度差が見られた。

 しかしながら、スコットランドに独立か否かで大波乱が巻き起こったのは、世論調査で賛成派が過半数を初めて超えた今月に入ってからであり、それまで英政府を含めた国際社会は単なるお祭り行事程度にしか認識していなかったのは否めない。だが、独立が現実味を帯びてきた投票直前あたりから、ようやくメディアは報じるようになったわけだが、その内容は「通貨はポンドが使えない」や「EU加盟は不可能」のように、明らかに独立後のスコットランドへ不安を煽るような内容であった。実際に不安要素は沢山あり報道に間違いがあったとは思わないが、あまりにも英政府寄りな報道であった事、そしてメディアが独立否決に一役買ったのは事実であろう。

 

 言い換えるならば、「メディアが独立への不安を煽り、情報を操作して世論を導き、スコットランドの独立を阻止した」と言えるのではないだろうか?

f:id:Youright:20140906042737p:plain考えれば危険なメディアの有り方

 私自身は今回のスコットランド独立には反対の考えであったが(私は反対する立場にはないが)、このメディアの在り方には大変な問題があると思う。先ほども述べたが、この独立に対する不安は確かに存在しその報道自体に問題はないと思う。

 だがそれが、もしも間違っていた情報ならば?

 例えば最近の日本国内における朝日新聞の報道を思えば、その情報により世界の世論が傾いてしまい、現在取り返しのつかない状況になってしまっている。それ故、我々日本人はメディアによる影響力の偉大さを、不本意ながらも身をもって知ってしまったわけであるが、今回のスコットランド独立での一連の報道を見て改めてそれを認識してしまった。

 つまりは、いくらインターネットなどで既成メディア以外の情報が自由に飛び交う時代になっても未だにこの世界はメディアによって幾らでも歴史を塗り替えることができる」という事である。これはメディアが一方的に悪いわけではなく、メディアによって誘導されてしまう側にも問題がある。いくら言論の自由や知る権利が進歩しても、「情報を疑うことなく受け入れてしまう体質」は、一度染みついてしまうと中々落とせないものであるのだろう。

 

 私がここで言いたいの何もメディアを疑えという事ではなく、情報を受け取る側のメディア・リテラシーを成熟させる必要があるという事である。

 メディア・リテラシーとは、メディアによる報道を主体的あるいは批判的に読み解き、必要な情報を引き出し、また真偽を見抜き、自己の意見・思考として活用する能力のことをいう。この能力が個々で成熟しなければ、独立した個人のアイデンティティを持ったとは言えず、民主主義にそれが反映する事もなく、結局はいつも何か大きな力の作用によって運命が義務付けられてしまうのである。これは決して民主主義とは言えず、広義においての全体主義であるのではないだろうか?

 

メディアリテラシーで見るスコットランド独立報道

 今回の、日本だけでなく各国における「英政府寄りに偏った報道」は、イギリスによる情報戦略が一つの要因になっている事は間違いないだろう。当然スコットランドが独立して一番困るのはイギリスである。イギリスが失うのは30%の国土や8%のGDPだけではなく、国連の常任理事国としての立場をも失う恐れがあり、これらは国際社会に対しての地位低下を意味する。それ故、イギリス政府としては当然行うべき行為であり、ケチをつけても仕方なく、むしろ賞賛に値する情報戦略であったと見るべきなのかもしれない。

 

  しかし、大国イギリスが自ら沈んで行く様は、他の国家から見れば喜ばしい状況でもある。例えば、日本やドイツなどはP5の1国であるイギリスが欠ければ、常任理事国入りがより現実的になり、その後の国際的な発言力は大幅に増すことになる。しかし、これを素直に喜べない理由は、この独立という二文字が各国に取っても非常にデリケートな問題になるからである。

 現在、世界では多くの国で独立問題を抱えており、その一部では激しい内戦を引き起こし被害者が多く出てしまっている。例えば、ロシアとウクライナのクリミア問題やイスラエルパレスチナの抗争、イラク・シリアにおけるイスラム国の台頭や中国でのウイグル族による反乱。特に中東やアフリカでは慢性的に内乱が続く状況にある。もしスコットランドの独立が達成されたら、これらの国においては反対勢力に勢いがつくことになってしまうわけで、独立を支持するような報道は英国の事情だけでなく自国の事情としても出来ないわけである。

 

 また今挙げた例以外でも、スコットランドと同じような暴力を伴わない民主的な独立運動も世界各地では起こっており、特に盛んなのがイギリスも加盟しているEUであるだろう。

 欧州では、スペインのカタルーニャでも今回と同様の独立住民投票が11月に計画されている*2他、同じスペインのバスクやイタリアの北部なども独立への機運が高まりつつあるのだ。欧州で独立への機運が高まった原因は、EUの影響力が欧州において大きく増したことが背景にあるだろう。今やヨーロッパではEUが一番大きいNationであり、国家はその次のNationとなりつつあるからだ。国境や関税がなくなり共通通貨を持った時点で、共同や連合という体の国家の存在意義が大きく薄れてしまったのは当然の成り行きかも知れない。

 私個人はEUと言う組織は、ヨーロッパ社会が選択した大きな間違いだと思っているが、それでも何とか成立しているのは強国がひしめき合っているからであり、もしもこれが民族というNationの集合体であっならば、それはただの烏合の衆に過ぎなくなってしまう。EU側は独立後のスコットランドの同連合の加盟は有り得ないと発表したが、実際にスコットランドよりもGDPが低い国はEU内に存在しているわけで、この発言はその後の欧州における独立運動へ拍車が掛からない為のものであった事は、言うまでもないだろう。

 

 つまり、もしスコットランドが独立した場合は「現在の世界地図の勢力図は塗り替えられ、世界の秩序が大きく乱れ、人類の近代史において歴史的な分岐点になる」というほどの大事件であったわけであり、世界中のその焦りが生み出したのが「英国寄りに偏った報道」なのである。そして、結果として世界の現状は何とか保たれたのだ。

 

 そして、日本でも例外では無く独立問題は存在するという事である。

 (沖縄は現実的には独立することは有り得ないが・・・) 

*1:なぜか朝日は17日の朝刊で、この話題を一切掲載していない

*2:しかし、スペイン政府はイギリス政府と違いこの投票を無効としている