Youright的な見解

あくまでも私的な見解である

北朝鮮拉致問題を見て、憲法9条改正や自衛権の拡大に反対する方々へ問いたい

 今月中旬、北朝鮮が同国による日本国民の拉致に関しての調査報告の回答期限を先送りにした。

 正直、我が国が北朝鮮に裏切られるのはこれが初めてではなく、もはや裏切る事が常識とまでなっているわけで、特別驚くような事ではなく「あぁ、またか。」と言うのが日本人の大多数の本音だろう。そもそも、今月初めに発足された第2次安倍改造内閣の拉致担当相が古屋氏から山谷氏へ交代した時点で、北朝鮮の回答が期待を裏切るものである事は、皆が薄々感づいていたのである。

 

 だが日本は、この許しがたい裏切り行為を断固として認めてはならない!!

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本当は、既に北朝鮮に攻められていた日本  

 まず北朝鮮による日本国民の拉致と言うのは、「国家的に行われた国家戦略であり国際法上は敵国への武力行使とみなされる行為」であるわけで、つまり北朝鮮が日本へ対し戦争を仕掛けた」ということである。

 

 これは何処かの犯罪組織や異常者が行った犯行とは全く違い、国連に加盟し国際社会から国家と認められている国が、国家ぐるみで行った犯行であり、この事実は「北朝鮮による拉致問題」を考えるうえで、我々日本国民が知っておかなければならない大前提であるだろう。

  そして残念ながら現在の日本の制度で拉致被害者達を救う手段は、もはやこの気まぐれな裏切り国家と交渉する以外、道が残されていないのだ。

 

 だが、問題はそれだけではない。

 日本の制度は、元々この「拉致自体を阻止する手段でさえ放棄していた」のである。

 

日本の防衛なんて実は穴だらけ

 日本国憲法第9条の条文では、我が国は一切の武力行使を永久に放棄し、その2項では武力を行使する戦力の保持や国の交戦権を認めないと定められている。要は、戦争をしてはならず、軍隊を持ってはならず、政府はこの命令を出してはならないという事になる。

 当然ここで、事実上武力を行使できる自衛隊と言う組織が問題になるわけだが、現在の我が国で自衛隊は、国際法上の自衛権に基づく集団であると解釈されており、当然ながら憲法9条がある以上は同組織が軍隊に成り得ることはない。ここで言う成り得ることがないというのは、軍隊のような武力行使が出来ないという意味であり、あくまでも自衛権の範囲内の行動に制限されるという意味である。

 国連憲章による自衛権の行使要件は次のように定義されている。

  1. 急迫不正の侵害があること(急迫性、違法性)
  2. 他にこれを排除して、国を防衛する手段がないこと(必要性)
  3. 必要な限度にとどめること(相当性、均衡性)

 これらの要件を見る限りでは、自衛権を適用する場合の解釈自体はかなり曖昧な物になっているのがわかる。つまり解釈次第ではいくらでも適用の幅を広げられるわけで、現にアメリカはこの自衛権の適用範囲を大幅に広げ、遠くイラクアフガニスタンを侵攻し壊滅させた過去を持つわけだ。流石にこれは過大解釈と言われても仕方ないだろう。

 一方、日本国では自衛権は認めているものの、「憲法9条により武力行使が認められない」と言う矛盾に初めからぶち当たってしまう。それ故、本来の国際法上認められている自衛権に極度の制限が掛けられ、解釈の領域が極端に狭まってしまい、世界に類のない日本独自の自衛権が誕生したのだった。

 

<本当は怖い日本の自衛権 

 日本の自衛権とは簡単に言えば、日本国領土内でしか適用ができない。

 これは、一見すると平和的で問題がないように思われがちだが、実は日本の平和に付け込もうとする輩から見れば、やりたい放題できる内容であり、また、このような不届き者に対して対処すらできないという問題だらけの代物なのだ。

 

 例えば、敵国の戦闘機が日本国内を攻撃する為に発進したという情報が入ったとする。だが我が国の自衛権では、たとえ事前に攻撃されるとわかっていても、日本国領域へ入らぬ限りはこの機に対し武力を行使する事は出来ない。要は事件が起きると分っていても、事件が起きるまでは何もしないという事である。さらに攻撃が成功し都市を壊滅させられたとしても、この機が日本の領域から逃げてしまえば日本国の自衛権では一切手出しが出来ないのだ。

 もっと現実的な話をすると、現在の軍事戦略はミサイルをもって攻撃が行われるわけであり、ミサイルの発射基地は多くの場合は相手国に存在する。日本へ向けられたミサイル発射のカウントダウンが始まっても、発射される前にその基地を破壊する行為は敵国へ武力行使とみなされ、憲法9条によりこれを行う事が出来ない。そして発射されたミサイルでさえも、日本の領土に入るまでは攻撃が出来ないのである。

 つまり日本の領土外であれば、相手がたとえ攻撃直前であろうとも、これに対して自衛権を行使する事はできず、これが有人の戦闘機だろうが無人のミサイルだろうがその条件は変わらないのだ。

 

 果たしてこれで本当に、自国の国民を防衛してると言えるだろうか?

(実際は日米安保条約があるので、アメリカが代わりにやってくれるだろうが・・・。) 

 

<拉致に対しての自衛権

 これは拉致問題でも同じ事が言える。

 先ほども述べた通り、北朝鮮の国家による拉致とは武力の行使でありこれは戦争行為である。戦争行為である以上、国際法上では自衛権の行使ができるわけだが、日本国においてはこれが国内のみに制限されてしまう。例えば、拉致された被害者が囚われている場所が判明していたら、アメリカなどの国は特殊部隊を率いて救出に向かえるが、日本の制度ではそれが国外であったならば救出する手段は一切ないのだ。つまり、国外へ出られれば泣き寝入りするしかなく、あとは外交で話し合うしか解決手段はないという事である。

 当然その話し合いがスムーズに行えるわけではなく、「金をよこせ」だとか「米を支援しろ」という理不尽極まりない条件が並べられるわけだ。

 これでは、武力行使を行った側の一人勝ちである。

 

憲法9条改正や自衛権の拡大に反対する方々へ

 私が今回述べたい事は、「日本は憲法9条を改正し軍を再建させ戦争が出来る国へ変えるべきだ!!」という話ではない。確かに9条の条文は日本が自ら作ったものではないにせよ、世界に誇れる素晴らしいものであり、世界中がこの憲法を持っていれば戦争などは即無くなるに違いない。しかし、現実にこのような憲法を持っている国は日本だけであり、その日本も自国で自国民を守る事を放棄しアメリカに守ってもらっている状況である。この状況を見ても、現在の我が国の自衛手段にはどうしても問題があり、やはり憲法第9条自衛権の解釈について国民全員が改めて考える必要があるのではないだろうか?

 

 反対派の意見は、日本国は憲法第9条があるから平和だったわけであり、今後も我が国は平和であるという考えなのかも知れない。

 だがここで、もう一度考えてみてほしい。

 

 「日本は平和であったと、本当にそう言えるだろうか?」

 

 北朝鮮と言う国家が、拉致と言う武力行使を行いその被害者は未だに相手国へ囚われているのである。その被害者は決して軍務や国家の重要職に就いていたわけではなく、親も兄弟も友人も恋人もいて、我々の周りにいる者と何ら変わらず、「明日自分が拉致され何十年も自由を奪われる」など微塵にも考えていなかった人々なのだ。

 その被害者や被害者家族を前にして、

 「日本は戦後ずっと平和であった」と言えるだろうか?

 「憲法9条によってこの国の平和は守られてきた」と言えるだろうか?

 

 もしそれを言ってしまえば、この被害者達は日本国民ではないと認めてしまう事になるだろう。

 自分は拉致されなかった。また自分の家族も拉致されなかった。それは単なる偶然にしか過ぎないでのである。

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最後に

 この一連の北朝鮮による拉致事件と言うのは1970年から1980年にかけて同国により行われた事件であり、この被害者達は現在最年少でも50歳代とみられている。したがって、その家族の方々は殆んどが高齢であり、中には再会を待てずに亡くなわれた方もいる。

 さぞや無念であったろう。

 現在、残された被害者家族の方々がどのような気持ちで毎日を過ごしているかを考えると、今回の北朝鮮の対応は当然許されるべきものではない。

 しかし、この裏切りの常習犯に希望を掛けるしか手段がないのも日本の現実なのである。

  

 日本へ帰国した一部の拉致被害者は、北朝鮮に囚われていた時「毎日毎日、日本からの助けを待っていた」と証言している。

 

 これが他人ごとであって良いはずがない。

 この問題は一部の政治家や一部の活動家が解決すればよい話ではなく、日本国民の問題であり、全員で取り組まなければならない。その為にはまず、「自分・家族や身近な者が、拉致されていた可能性も十分考えられ、また今後もその可能性は有り得る」というこの国の現実を皆が知るべきであろう。

 そして、これは将来必ずしも北朝鮮だけが行うものとは限らないのである。