Youright的な見解

あくまでも私的な見解である

東京オリンピックに騙されるな!!

2020年の夏季オリンピックの開催都市が、東京に決まって今日で1年が経った。

首都圏に住んでいない方はあまり実感がわかないと思うが、東京は着々とインフラ整備や都市の建設が始まり、オリンピックムードもいよいよ高まってきた感じがする。

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今年の10月10日で、前回の東京オリンピック開会から50年となる。

 

半世紀前の東京オリンピックは、日本史においても世界史においても、大きな意味があった。

  • かつての敗戦国が国際社会の表舞台に再び立てるシンボル的な意味
  • 史上初の有色人種国家での開催
  • そしてこの大会は、時代のあおりを受け過去最高の出場国数を記録した。(40年代から60年代にかけて、ヨーロッパ諸国・アメリカの植民地支配から独立した国家が、多数参加をした。)

信じられないかもしれないが、1964年以前の日本は海外に自由に旅行に行くことができなかったのである。しかし、この年を境に海外旅行が自由化され、誰もが好きな時に外国へ行き来できるようになった。

つまりこの年から、本当の意味での国際交流がスタートしたわけだ。

 

戦争により焦土と化し全てを失った国が、わずか19年で近代国家と肩を並べるまで復興を遂げられた理由は、皆が「明日は今日より幸せになれる」と信じ、実際にそれが現実となっていったからであろう。

 

東京オリンピックの後、目まぐるしい経済発展により日本はすべてを手に入れ、やがて緩やかな坂を転がり続けることになる。

今、そんな日本がオリンピックを開催する意味とは何であるのか?

f:id:Youright:20140906042732p:plain オリンピックとアベノミクス

オリンピックの経済効果とは、まずその大部分がインフラ整備や競技場の建設・都市開発のような土木・建築工事にもたらされる。

この工事の発注元は国や都であるわけで公共事業となるが、都市を丸々再開発するわけだから普通の事業と違い「異次元的な規模の公共事業」となる。

これこそアベノミクスの第2の矢であるわけで、今回の東京五輪の決定は第2次安倍政権にとって、非常に追い風になったと言えるだろう。

それは第2の矢を射る大義面分が出来たからだ。

 

公共事業の中でも、公共工事を嫌う有権者は非常に多い。

  • 巨額を投じて施設を建造しても、実際は利用者がほとんどいない
  • 大規模な橋や道路を作っても、大した交通量もなく維持費の方が高くつく
  • 景気が良いのは工事が終了するまでの期間限定であり、所詮は一時的な効果であるから

といった理由から、結局、公共工事で儲かるのは土建屋と政治家だけとされ、大した成果も上がらない事から、これら両者の癒着を含め「箱モノ事業」や「バラマキ」と揶揄され嫌われるのである。その結果、「工事に費用を回すなら社会保障費の方に税金を回せ」という意見に繋がっていくわけだ。

 

  ー 以下脱線(公共事業の減少~アベノミクスまで)

<公共事業の歩み> 

90年代後半までの日本の国庫支出額の割合は、公共事業費が社会保障費を上回っており、この状況は先進国の中で日本特有と言って良いものであった。「日本は土建国家」と言われた所以はここにあるだろう。 

そんな公共事業は2000年を境にして減少していく事になるが、この理由は、少子高齢化が進み社会保障費に充てる財源が増えた事と、もう1つ『新自由主義』という考えが政治に蔓延していったことである。この『新自由主義』の考えによる政治を行ったのが小泉政権であった。

 <新自由主義が唱える小さな政府>

新自由主義については今回はテーマではなく、私は専門家でもないので要点だけ言うと、「政府主導でやってきた事業を民間に丸投げして、資本主義の下で競争させそれを発展させる」考えである。当時、官から民へ名の下で郵政は民営化され、今まで政府が設けていた規制も次々に緩和されていった。

利権と癒着する族議員抵抗勢力と称し、それを成敗するような演出で国民からは高い支持率で歓迎されたが、結果として、公共事業を減らした事で少なくなった仕事を多くの企業で奪い合う現象が起こり、企業間の競争は質ではなく価格競争に発展する。

結果として、価値が下がり賃金も下がる・いわゆるデフレ現象になり、所得格差の広がりに繋がっていった。これが反新自由主義の唱える言い分である。

<再びスポットが当てられた公共工事

民主党政権下で公共事業はさらにガクンと減少させられることになるが、その前に起きたリーマンショックの煽りを受け、景気はさらに冷え込みデフレは加速してゆく。

このデフレと言う現象を改めて慎重に見つめ直した所、実は公共事業に多くを依存していた頃の方が、デフレの進行を防げていた事実が過去のデータから浮上してきたのだった。防げていただけで脱却までには至らなかった理由は、その事業の量が少なかったからであり、この量を大胆に増やせばデフレ脱却が出来るという考えが生まれてきたわけだ。

この考えに基づきデフレ脱却政策を行おうとしたのが、アベノミクスである。

 

  ー 以上脱線終わり

東京オリンピックの為の都市開発と言う名目ならば、公共事業を敵視する有権者達や新自由主義を掲げる知識層に遠慮をする必要はなく、堂々と巨額の公共投資がおこなえるのである。

これが第2の矢を射る為の大義名分になるわけだ。

しかし矢を射ったのは良いが、その矢は果たして的を打ち抜けるのだろうか?

f:id:Youright:20140907043431p:plain で、オリンピックで景気は良くなるのか?

恐れ多くも私の自論を言えば、「オリンピックで日本の景気は良くならない!!」である。その後で、「しかし!!」と続くのだがそれは後述としたい。

 

よく長野オリンピックを例にあげて「東京オリンピックにも経済効果が無い」と否定的な意見を言う人がいるが、それは全く的外れな見解であるだろう。

公共工事の問題視される理由は『箱もの事業』や『バラまき』と呼ばれる「利用者もなく採算が取れない物」に巨額な税金を投じて建造する点にあると言える。

本来インフラと言うのは、社会構造の基本部分でありそれは長期的に使えなくては意味がなく、利用者のいないインフラなど単に環境破壊であり税金の無駄使いでしかなく、景気にも一時的な効果しか生まれない。

しかし逆に長期的に採算が見込めるインフラは、投資する価値が大いにある。 

価値のあるインフラとは

例えば現在の東京を見てみると、50年前の東京オリンピック用に作られたインフラ設備が未だに現役で利用されており、首都高・地下鉄・ホテルそして新幹線などは、ドル箱状態となっているのだ。

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 私は東京に住んでいるので、これらのインフラ設備を毎日使うが、首都高は慢性的に渋滞し・地下鉄などは迷路のようで乗り継ぎも不便であり、お世辞にも使い勝手が良いとは言えない代物である。

特に首都高は、前回のオリンピック用に急ピッチで建造された為、用地の買収に時間がかけられなかった。その為、街をグニャグニャ縫うような作りとなっており、とても機能的な道路計画とは言い難い。同時に、関西方面などの地方から高速道路を利用し北へ向かうには(あるいは逆も)、どうしても東京を経由しなければならず、首都高を一旦は乗り継ぐしかない。

要は、ただでさえ慢性的に渋滞する道に、追い打ちをかけるように、さらに交通を誘導しているのが現状なのだ。

 

こんな使い勝手が悪いインフラでも、利用者が減る事はなく、むしろ増加傾向にあるのが驚きである。

ここが、長野と・・・地方と東京の大きな違いであるだろう。

東京は別格

東京というのは日本の首都であり政治・経済の中心地であり、食・ファッション・流行すべての中心地と言っても過言はない場所である。

何が言いたいかと言うと、東京はオリンピックがあろうとなかろうと1年中を通して、国内だけにとどまらず国際的に見ても、常に人が集まる場所であるという事だ。

例えば、「長野オリンピックの際に作られた施設や道路が、大会中は大いに利用されたが、その後あまり需要が無く・ほとんど使われずに採算が取れず、借金が返済できない」なんて事は、稼働人口2000万人規模の都市である東京では絶対に起こりえない事態なのである。

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実際に都が運営する事業でも赤字経営の物はあるが、東京が地方と違って突出している特徴は、財政赤字にならない事だろう。

これは、多くの企業が東京に本社を置いており法人から地方税をたんまり徴収できるからである。さらに、東京の土地は資産価値が高く富裕層も多く、ここから得られる固定資産税や住民税も大きな収入源になっている。

 

つまり財政難にならない東京で公共事業を行っても、その結果が赤字経営だろうが何であろうが、最終的には税収で借金が賄える仕組みなのだ。

 

このような観点から、東京で行われる公共事業は、

  • その圧倒的な集客力により、投資に見合うだけの価値がある経済効果が生み出される。
  • 絶対的な財政力を持っていることから、負債を抱えるリスクが少ない。

よって現在、確実に失敗しないと言える公共事業を大々的にやるとするならば、日本では東京でしか出来ないのである。

 

何れにせよ、公共事業とは必ず一時的な経済効果を生み出す物である。

現在の使い勝手の悪い東京のインフラを、大規模な公共事業で整備し利便性が高まれば、ますます首都には人や企業や物が集まり、将来的にも活性化する事になるだろう。

 

しかしながら、これは同時に地方と東京の格差が、ますます広がる現象を生み出す事に繋がっていく・・・。

東京オリンピックは、東京からすれば「経済復興の象徴」に成り得るが、地方からすれば「自らの土地が衰退して行く象徴」となる可能性は十分にあるのだ。

 

以上、恐れ多くも私の見解を述べると

「オリンピックで日本全体の景気は良くならない!!」

がしかし、「東京の景気は確実に良くなる!!」と続くのである。

 

続く・・・

続・東京オリンピックに騙されるな!! - Youright的な見解

 

掲載写真はロイヤリティフリーの物を使用しています