Youright的な見解

あくまでも私的な見解である

続・東京オリンピックに騙されるな!!

     f:id:Youright:20140910032932j:plain

 東京オリンピックの経済効果は3兆円と言われており、他にも10兆円規模だという人や中には150兆円などというとんでもない予想を挙げる人までいる。

ここまで意見にバラつきがある理由は、経済効果の計算方法・・・と言うより、経済効果の捉え方がバラバラだからであろう。

 経済効果を算出する時には経済波及効果という現象を考慮するわけだが、経済波及効果とは、直接効果がもたらす1次波及効果と、この効果により生まれる2次波及効果、さらにそれ以降の3次・4次波及効果と連鎖して広がっていく現象の事である。

この現象を、オリンピックの経済効果の例で見てみると

  • 1次波及効果・・・オリンピック施設の建造などで建設業界の景気が良くなる
  • 2次波及効果・・・所得の上がった建設業者が、会社の近くの飲食店などで金を使い飲食業界の景気が良くなる。

となり、この後に3次波及・4次波及と広がるわけだが、この場合「オリンピックの経済効果が何処にまで影響をするか?」その範囲の設定により、経済効果の額は大幅に変動するわけである。ただ、あまり範囲を広げ過ぎても「風が吹けば桶屋が儲かる」のようなカオス理論にすり替わってしまい、ただただ莫大な金額が算出されるだけで、信憑性も薄くなってくると言えるだろう。

 だが東京というだけで、あまりにも恵まれ過ぎるこの環境下では、多少大げさな金額が提示されても、あながち嘘にはならないとも思える。

なぜなら、それだけの可能性を未だに秘めているのが、東京という都市だからだ。

 

 そんな方々で期待が高まるオリンピックの経済効果ではあるが、この現象にはある落とし穴も存在しているのである。

        f:id:Youright:20140910023219j:plain

 実は経済効果というのは、プラス効果だけでなくマイナス効果も起こるのだ。

 経済効果と言うのは「あるイベント(直接効果)が起こってそれを中心に経済波及が広がる」事で、これは水面の上に立つ波紋に例えるとわかりやすいと思う。波紋は波が発生し起こる現象であり、その波の部分は水位が高くなるわけだが、水位が高くなるのは水の量が増えたからではなく、どこかの水位がある事情により低くなり、その反作用として高くなるのである。

 これを経済に話を置き換えれば、世の中に存在するお金の量は決まっているわけで変化する事がなく、誰かが儲かれば誰かが損をすることであり、これは経済で最も基本的な原則であるだろう。この基本原則に沿った場合、東京で経済が3兆円プラスになれば、東京以外の地域では逆に3兆円マイナスという事になる。

 

 元々、経済効果とは「お金をいくら使った」ではなく「お金がいくら動いたか」を試算するものであり、上記の例だと東京で3兆円プラス・地方で3兆円マイナスになり合計でこの経済効果は6兆円となるわけだ。このように極端な事例が起こる可能性は、まず有り得ないが、経済効果は希望的観測だけではなく常に負の面と隣り合わせである事は間違いないだろう。

f:id:Youright:20140906042737p:plain 暴論ではあるが・・・

 確かに、東京だけにプラスの経済効果が表れるというのは暴論すぎるかもしれないが、しかし、本当にそうだと言えるだろうか?

 

 現在、東京は慢性的な労働者不足に悩まされており、オリンピックに向けた都市開発を大々的に行うにも働き手がいない。

 これらを補う為に地方から人手を募集するわけだが、労働者不足の問題は、現在の日本では東京だけの問題ではなく全国共通の問題であり、簡単には行かないだろう。それでも東京は労働力を確保する為に、地方よりも賃金を高設定にするなどして、何が何でも労働者を集めるのである。

 50年前のオリンピック時には、実際にこのような現象が起こり、地方は人手不足に陥り産業が一時的に停滞してしまった。

 だが、地方から家族を養う為に出稼ぎに行く行為は、働いたお金は家族の元・つまり地方に戻るわけであり、結果として地方の経済に波及が行くわけだが、それはあくまでも一時的なものに過ぎず、その間の人手不足による地方産業の衰退は、将来的にますます東京と大きな格差を生む原因になるだろう。 

      f:id:Youright:20140911031721g:plain

 しかしながら、それでも50年前は建築現場で使われる建材は地方に依存していた面もあった。例えば鉄骨は東北・アルミ部材は北陸・内装材は関西、と言った具合に地方にも経済の影響が波及していったのである。

 だが、現在は50年前と事情がまるで違ってきてしまった。

経済波及の向かう先 

 今日の日本はグローバル化の下で、特に鉄・アルミ・ガラス・石などの建築用製品は、殆んどが海外で生産され輸入されており、さらに、先ほどの労働者不足問題も、政府が規制を緩和し、海外から外国人労働者を積極的に迎え入れようとしているのが現状である。

 つまり経済の波及は、東京から地方ではなく、東京から海外へ向かってしまうのだ。これが前回私が、「オリンピックで日本の景気は良くならないが、東京の景気は良くなる」と書いた理由である。

f:id:Youright:20140906042741p:plain 結局は東京の一人勝ち 

 今回の東京オリンピックは、フジテレビ等が所在する「お台場(以降ベイエリアと呼称)」を中心にして開催されることが決定している。

      f:id:Youright:20140911223201j:plain

 このベイエリアと言うのは東京都が長年巨額の資金を投入して開発し続けた土地であるが、一向に成果が出ず苦戦を強いられていた「言うなれば東京のガン」であった。一時期はフジテレビが移転され大観覧車が建てられ注目を浴びたが、それでも思惑ほどには企業や住民を誘致できず、開発業者も同地区には敬遠する傾向があり、東京有数のウォータフロントでありながらも未開発の土地が多く存在していた。

 理由は交通網に問題があったからだろう。現時点でベイエリアから都心へ向かう道路は2つしかなく、また鉄道なども運賃が他の私鉄に比べて割高であり、交通の利便性は低い状況である。本来、ベイエリア東京湾にある離れ小島ゆえに、ここへ行くルートを設けるには、海に橋を架けるか・海底にトンネルを掘るしか手段はなく、開発には資金と時間が掛かってしまうのだ。これが現行の交通機関が割高の原因であり、新たに道路を増設するにしても簡単には行かない原因であった。

右肩上がりに増える都心の人口

 だが金と時間に糸目をつけず開発し続けた甲斐もあってか、最近ようやくインフラ設備も整う目途がついてきた。もともと東京都は2016年夏季オリンピックの誘致を考えており、これに向けてベイエリアの開発を進めていたのである。2015年には都心・ベイエリア間に第3のルート「環状2号線」が開通し、利便性は遥かにアップすると見られる。これに合わせて、今まさに、この地区では超高層タワーマンションの建設ラッシュの最中になっているのだ。

 「タワーマンションが1棟建てば村が1つ消える」

 現在、東京の方々で建てられている40階規模のタワーマンションは、1棟につき約3000人程度の住人が居住する見込となっている。日本に在する183の村うちの半数近くは、人口が3000人規模である。つまり単純に考えれば、東京にタワーマンションが1棟建つ度に、地方から村が消滅している事になるのだ。

 因みに5棟建てばそこに住む住人は約15,000人規模となるが、日本に在する745の町の半数は、人口が約15,000人前後となっている。

 暴論すぎる考えかもしれないが、現に地方の人口は年々減少している一方で、東京23区の人口は年々増加しているのは事実なのである。

f:id:Youright:20140906042738p:plain 東京をみんなでシェアする

 先月、経済新聞や各紙に『YKKグループ』が本社機能の1部を創業の地である富山へ移すと報じられていた。これに至った経緯は、来年3月に北陸新幹線の長野・金沢区間が開業され、富山から東京までの所要時間が2時間10分になり日帰りが可能になったからと伝えられている。東京のサラリーマンには、近郊の県から毎日片道2時間かけて通勤する人も珍しくない。見方によれば富山も始発に乗れば9時には東京の会社に出勤できるわけで、十分通勤圏内と言えるようになるだろう。

長野オリンピックと平昌オリンピックの大きな違い

 この北陸新幹線長野オリンピック開催に合わせ、現在は先駆けて東京・長野間が開業している。長野オリンピック用に行った開発事業はその後あまり需要がなく、全体的に見れば失敗であったとされている。しかし、都心に1時間20分程度で直結している新幹線を開通させた功績は非常に大きい。

 東京は日本の首都であり、あらゆる物の中心であって、その役割は将来的にも大きくは変わらないだろう。

 長野県は一(イチ)地方都市に過ぎなかったが、新幹線が開通したことにより首都圏と同等の機能を有することが出来たのである。時間的に見れば、東京の会社へ通勤する事も全く問題はなく、必要さえあれば直ぐにでも行けるわけで、企業がこの地で業務を行う環境はすでに整っている。将来的にYKKグループのような企業が、ここに本社を構える可能性も十分あると言えるだろう。

 このように地方都市の未来は、新幹線によって開かれたのである。

 

 一方で、2018年の平昌オリンピックにおいて、韓国は高速鉄道計画を断念してしまった。韓国は日本以上に少子化・人口減少問題が深刻化しており、地方の過疎化も進んでいる。長期的に見て採算が取れない理由で計画が白紙にされたが、これは地方の未来を危うくするものであり、このツケは将来的に韓国にとって大きな問題となって返ってくるだろう。そもそも、長期的と言う期間をどの程度で見ているのかさえ疑問に思う。

東京を広げる

 前回私は、東京の交通インフラは利便性が低いと書いたが、実際はかなり改善がなされている。

 自治体やJR・私鉄各社が協力して乗換えがスムーズに行えるようホーム改装し、なるべく1本(2本)のレールでお互いを結べるように相互運転を取り入れるなど、積極的に改善を行っているのだ。その結果、地方から東京へのアクセスは格段に向上し所要時間も大幅に短縮され、通勤可能圏内は都市郊外へますます広がりつつある。

 私は、これこそ真に進めるべき開発であると考える。

 都心を中心にした交通機能の一元化や北陸新幹線の開通、新たに着工されるリニア計画、これら東京と地方を繋ぐネットワークの構築が進むことにより、日本の首都と言う特別な存在が身近になり多くの地域で共有できるようになるわけだ。

 そして、多くの地域が首都機能と同等の能力を得ることにより、東京という範囲が広がって行くのである。

 いずれは地方ではなく、もはやそこはトウキョウになる日も夢ではないのだ。

 

 日本は将来的に地方の発展を考えれば、道州制地方分権を目指す必要があると思う。

 現在、地方自治体の首長等が懸命に『都構想』などを呼びかけているが、これを実現するには憲法改正をしなければならず、ハードルが高い。何より国民の関心をもっと向けなければならず、これには相当時間が掛かり、まだまだ先行きは見えないのが現実だ。

 しかし、東京は明日も首都である事は変わらない。

 まずは名古屋・大阪・福岡のような地方大都市が、自分達と近郊の県で「お互いを共有できる優秀なネットワーク(インフラ)」を作り、その上で東京も中継できる「HUB都市として発展すること」が重要ではないだろうか?

 ゆくゆくは、それが地方分権の大きな足掛かりになると私は思っている。

(最後の方は東京オリンピックと話が関係なくなってしまったが・・・。)