Youright的な見解

あくまでも私的な見解である

火山は必ず噴火する!!

 今週は先月27日に発生した御嶽山噴火のニュースが連日報道された。8月末の広島の土砂災害は、土砂災害として戦後最大の被害者を出してしまった、それに続き今回の噴火も火山災害として戦後最大の死者を出してしまった。

 私の世代が火山災害で真っ先に思い出すのは、1991年に発生した雲仙普賢岳の噴火だろう。この災害は、43名が死亡してしまう戦後最大の火山災害となってしまった。中でもショッキングだったのは、災害報道中に報道陣のメンバーやその周辺にいた警官・消防団員が火砕流に飲み込まれ死亡してしまった事だ。災害時の報道では、車のスピードよりも速く迫りくる高温の火砕流があらゆる物を飲み込んでゆく様が映し出され、当時子供だった私は「こんな恐ろしいものに飲み込まれたら、どんなに苦しんで死ぬだろうか?」とTV越しで想像しただけで恐ろしく思ったものである。

 その後も日本列島では定期的に火山の噴火が繰り返されてきたが、普賢岳ような死者が出るにまで至る事は無かった。しかし、今回の御嶽山噴火では普賢岳の災害を超す死者をだしてしまい、不本意ながらも戦後最大の記録が塗り替えられてしまった。

 今回の災害で亡くなられた方、またそのご家族には心からお悔やみを申し上げます。

 

噴火するから火山

 我が国は、世界規模で見ても地震が多い地理条件に置かれている。これは、プレートの重なりに日本列島が存在している為だが、これは同時に火山が存在する絶対条件でもある。我々は、改めて日本は地震大国であり火山大国でもある事を再認識したのではないだろうか?

<噴火の予知>

 今回の問題点は様々あるが、中でも問題視された点は「火山の予知は難しい」という事実が明るみに出た事だろう。過去の実績では北海道の有珠山や三宅島の三宅山の噴火などのように、事前の予知により全員が避難できた例もある。だが今回のような水蒸気爆発の噴火の予知は難しいとの見解が改めて示された。

 御嶽山は元々は「死火山」とされていた山であった。その後1968年から活発な噴気活動をはじめたことから「活火山」に変更され、1979年にも今回のような水蒸気爆発を起こし、以降、小規模な水蒸気爆発を繰り返していた。2009年には常時観測対象の火山に指定されている。常に監視下に置かれているにもかかわらず、今回の噴火は予想できなかったのだ*1

 

 噴火の予知とは、まずは地震の観測から始まる。地震の多発は噴火の前触れであり、今回の噴火もやはり同じように事前に地震が80回以上も多発していた。そして次に行われるのは山の表面の観測である。噴火前には、マグマなどが地下から上昇し山の表面を盛り上げ、この変異を観測し初めて噴火の可能性が判断できるわけであるが、今回の噴火ではこの山の表面の変異を確認が出来なかった為、予知にまで至らなかったのだった。

<消えた休火山と死火山>

 今からさかのぼる事20年以上になるが、私の世代は小学校で火山には3種類あると習った。私自身それをつい最近まで信じていたのだが、その3種類とは「活火山」「休火山」「死火山」である。死火山は読んで字のごとくもう噴火することがない死んだ火山であり、少なくとも安全な物であると私は子供ながらに思ったものである。だが近年の研究で、「死火山」や「休火山」の検証データは不十分であり、その見直しが検討されていたのだ。

 元々「死火山」や「休火山」のデータは、人類の有史以来の火山活動に基づいたものであった。しかし、人類が地球上へ誕生したのは地球の歴史から見ればつい最近の事であり、人類の歴史が始まったのは、つい今しがたの出来事なのである。最近のデータによれば火山は1万年周期での噴火も起こり得る研究結果も発表され、「死火山」「休火山」の存在意義も見直しがされた。そして現時点において、学問上による定義付けでは、「死火山」「休火山」と言うカテゴリーは存在していないのである。これが見直されたのは1991年*2からである。

 つまり現時点で火山は、その殆んどが活動中の活火山と言う事になるのだが、1991年以前に教育を受けた者達は私を含めこの事実を十分認識していなかった・あるいは現在進行形で認識していない可能性があるのではないだろうか?

 

知らない事は命取りになる

 結局私がここで述べたいことは、今回現場にいた登山客の何割が「御嶽山気象庁が噴火の恐れがありとして常時観測対象に指定している活動中の火山である」という事を知っていたのか?という事である。

 

 今回問題になったのは、噴火予測の難しさもさることながら、その救助活動が困難を極めた事だろう。救助ヘリが着地する箇所が限られてしまう山岳地帯は、救出活動を困難なものにした。また、登山届が出されていないことも救助を難しいものにした。実際に入山したのは誰で何人なのか正確に把握できず、携帯電話も当然圏外であるから緊急の連絡も取れないのだ。さらに避難の難しさもあらためて認識された。険しい登山道では引き返すのも容易ではなく、噴煙で視界が遮られた状態で不安定な足元を進めば2次災害を引き起こす恐れも十分ある。それに加え、噴火による噴石が飛び交う中で遮るものが無い山肌にいるのは恐怖以外の何ものでもないだろう。

 

 私は火山に登っていた人間が悪いと言うつもりはない。確かに気象庁は噴火を予知する事はできず、また噴火の2週間前から微弱な地震が多発していた事も公表せず、災害当日の御嶽山の警戒レベルは1の平常とされていた。それでも活動中の火山に登るという心構えは、登山者に必要だったのではないだろうか?本来ならば連絡用の緊急無線や衛星携帯電話、身を守る為のヘルメットやゴーグルやマスクなどの保護具、少なくともこれらを常備する必要性はあったはずである。だが残念ながら、今回このような認識を持っていなかった登山者が多くいたという現実が露呈される結果となってしまった。

 

<身近にもある活火山>

 これは御嶽山の登山者だけの問題ではなく、国民レベルの問題でもある。

 例えば、日本を象徴する一つでもある富士山だ。

 去年世界遺産に登録された富士山は、昨年だけで年間50万人近くの観光客が国内外から訪れているという日本有数の観光スポットであるが、現時点では御嶽山と同じく噴火が警戒され気象庁によって常時監視下に置かれている状況にある。しかし富士山は1975年までは「休火山」とされており、現在でも「富士山は休火山である」と思っている国民は多く存在するのだ。(恥ずかしながら、私もその一人であった)

 その他にも、関東有数の温泉地である箱根山や、大分の別府温泉や塚原温泉の熱源である鶴見岳・伽藍岳*3なども、やはり同じように気象庁に常時観測対象の火山として指定され、このように普段我々が身近に感じている観光地にも、火山災害の危険は存在しているのである。

<知らないでは済まない>

 気象庁の見解からもわかるように、御嶽山はいつ噴火してもおかしくない状況であった。それが、1年後でも10年後でも1000年後でもなく、たまたまこの時期に起こってしまったというわけで、被災された方には申し訳ないが、これは運が悪かったとしか言いようがない。

 だが、確かだったことは御嶽山は活動中の火山であった」という事であり、起こってしまった以上、知らなかったでは済まされない。特に家族で子供連れの場合だったら、親の無知は重罪になるだろう。たとえ知っていたとしても、100%天災を防ぐことは出来ない、だが危機管理や予防策は自ら講じられるはずである。

 

 一番怖いのは、噴火でも噴煙や噴石でもなく、知らないという事なのではないだろうか?

 知っている人間を攻める者はいないだろう。

*1:11km 離れた高感度地震観測網の開田高感度地震観測施設(N.KADH)では火山性微動が観測され、7分前には傾斜計で山体が盛り上がる変位も観測されていた

*2:実際には1975年から見直しは進められていたが、はっきり見直されたのは1991年からである。

*3:現在火口は入場禁止になっている